月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
感慨深いとか、そういったものはないけれど、思うことはある。
特に多江さんのこと。
イェマント氏病は世界でも珍しい病気だという。
だとしたら有効な治療法はないはずだ。
となると、多江さんはずっとこの病院で過ごすのだろうか。
あたしが退院した後も。
そう考えたら、妙に切なくなってきた。
「会いに行こうかな」
退院が決まったと、報告しよう。
あたしは松葉杖を手にとった。
―――――――――――
屋上へ行けば会える。
なんて確信はなかったけど、やっぱり最初は屋上へ足を向けてしまう。
はたして屋上のドアを開けると、そこには多江さんがいた。
こりゃもう運命だね。
ピンク色のワンピース姿の多江さんは、いつものように携帯を手にしていた。
その視線は携帯に…落としていなかった。
「?」
不思議に思った。
多江さんと言えば常に携帯に目を落としている女性(ひと)。
ここ数日でそんなイメージが出来ていたからだ。
特に多江さんのこと。
イェマント氏病は世界でも珍しい病気だという。
だとしたら有効な治療法はないはずだ。
となると、多江さんはずっとこの病院で過ごすのだろうか。
あたしが退院した後も。
そう考えたら、妙に切なくなってきた。
「会いに行こうかな」
退院が決まったと、報告しよう。
あたしは松葉杖を手にとった。
―――――――――――
屋上へ行けば会える。
なんて確信はなかったけど、やっぱり最初は屋上へ足を向けてしまう。
はたして屋上のドアを開けると、そこには多江さんがいた。
こりゃもう運命だね。
ピンク色のワンピース姿の多江さんは、いつものように携帯を手にしていた。
その視線は携帯に…落としていなかった。
「?」
不思議に思った。
多江さんと言えば常に携帯に目を落としている女性(ひと)。
ここ数日でそんなイメージが出来ていたからだ。