月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「これで彼氏と会えるわね」

「え、あ…はい」

正直、照れる。

同時にまた不思議な感じがした。

違和感とも言うべきか。

多江さんの言ってることはおかしくない。

おかしくないんだけど、感じが違う。

何かこう、多江さんの中に一本芯が入ったというか…。

「そうか、旭さん退院なのか」

多江さんは再び視線を遠くに飛ばした。

…心なしか、多江さんの口調が変わっているような…。

「旭さん」

多江さんはあたしに向き直ると、ワンピースのポケットから、何かを取り出した。

「手を出して」

言われるままに右手を出すと、多江さんは取り出したその何かを、あたしの手の平に置いた。

それは、ネックレスだった。

シルバーのチェーンで、猫のシルエットが入ったプレートが付いている。

「旭さんて、猫好きよね?」

あたしが子猫を助けたから、そう言ってるのだろう。

猫以外も、だいたいの動物は好きだ。

あたしはうなずいた。

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