月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
「それあげるわ」
ええッ!?
「も、もらえません!」
返そうとするあたしの手を、多江さんはそっと制した。
「退院祝いよ」
「で、でも」
「それね、隆夫さんが買えばいいって言ってくれたネックレスなんだ」
「だったらなおさら…」
言った後で気付いた。
薦めたのは、隆夫さんじゃない…。
「いいのよ、もう」
多江さんの笑顔に、あたしはもう何も言えなくなった。
「お礼だと思って受け取って」
お礼…?
訝るあたしを置いて、多江さんは立ち上がった。
「ありがとう、旭さん」
あたし別にお礼を言われるようなことは何も…。
「さようなら」
多江さんは屋上から立ち去った。
あたしは黙って、多江さんの後ろ姿を見つめることしかできなかった。
「あ…」
あたしは気付いた。
多江さん、今日は一度も携帯を開かなかった…。
―――――――――――
病室に戻ると、携帯にメールが入った。
ええッ!?
「も、もらえません!」
返そうとするあたしの手を、多江さんはそっと制した。
「退院祝いよ」
「で、でも」
「それね、隆夫さんが買えばいいって言ってくれたネックレスなんだ」
「だったらなおさら…」
言った後で気付いた。
薦めたのは、隆夫さんじゃない…。
「いいのよ、もう」
多江さんの笑顔に、あたしはもう何も言えなくなった。
「お礼だと思って受け取って」
お礼…?
訝るあたしを置いて、多江さんは立ち上がった。
「ありがとう、旭さん」
あたし別にお礼を言われるようなことは何も…。
「さようなら」
多江さんは屋上から立ち去った。
あたしは黙って、多江さんの後ろ姿を見つめることしかできなかった。
「あ…」
あたしは気付いた。
多江さん、今日は一度も携帯を開かなかった…。
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病室に戻ると、携帯にメールが入った。