月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
夕食後、TVを見ながらまどろんでいたら、眠くなってきた。

もう少しで消灯時間だったが、いま寝たら変な時間に目が覚めそうな気がした。

自慢じゃないが、消灯時間に寝た事は一度もないのだ。

こそこそTVみたり、雑誌めくったりして、午後11時ぐらいに寝るのが常だった。

何で変な時間に起きるのが嫌かって?

そりゃそうでしょ。

ここは病院、夜中に何がうろついてるかわかったもんじゃない。

その「何か」と出会うなんて、あたしは絶対に嫌だ。

体を動かせば眠気が紛れるかも、と思ったあたしは、松葉杖を手にして廊下に出た。

午後9時前でも、病院の廊下は暗い。

各部屋からもれる明かりがなかったら、真っ暗だったろう。

ひょこひょこと廊下を歩いていると、何か騒がしい音が聞こえてきた。

それが駆け回る足音と怒声と気付くのに、時間はかからなかった。

「屋上からか!」

「警察にも連絡を!」

< 96 / 166 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop