氷女子と水男子
「…もう…許さない…」
「わーすみませんホントごめんなさいだからその割れた氷を鈍器にするのはやめてーっ!」
大輔は被害が出る前にその場を恐ろしいほどの逃げ足で立ち去った。
「……まったく…」
立ち去った後、氷華はちらりと横を見た。
水斗の席。
「……タイプなんて、聞かなくても…」
氷華はなんだか恥ずかしくなった。
「プレゼント?」
「そうそう、女の子は突然の贈り物に弱い! な、大輔」
「…ハイ、ごめんなさい」
タイプを聞くのを失敗した上に、氷華の機嫌を損ねるようなことをした大輔は、弘樹に笑顔という恐喝を向けられてしゅんと縮こまっている。
「お前水好きだし、購買で一番高級なミネラルウォーター買ってあげればどう?」
「…あー、アイツ水大っ嫌いなんで、多分受け取ってもらえないかと…」
「あーなるほど…。女心って、難しいなぁ」
「……」
大輔は密かに、それは女心と違うんじゃないか、と思った。
「氷華ちゃんって、氷大好きなんだろ? だったら氷あげれば…」
「それは俺のプライドに反するんです」
「……そうか」
どうしたもんかな、と弘樹は思う。