氷女子と水男子
自分勝手な怒りだ。
分かっているけど、それでもイライラする。
(……あ)
ふいに氷華は思った。
今ここで頼みを受けて、悪い方向に引っ張って行くように左右したら。
2人は、結ばれないかもしれない。
(でも…)
そんなの、最低だ。
そんな考えが浮かんだ自分に、幻滅した。
「……」
かと言って、自分のことを諦めて、他人に手を貸すつもりもない。
勝ち目はほぼないが、返事を聞いてないなら少しは希望があるかもしれない。
つまり、断る。
(でも、どうやって断ろう…)
パターン1:
『ごめん、無理』
『ええ? そんな…わたしに協力してくれないの? なんで? 友達でしょ?』
『…えーと…それは…』
『あ、もしかして…氷華ちゃんも水斗くんのこと…』
(ああ、そんなの駄目! 知られたくない!)
ストレートに断れば、きっと同じ人に思いを寄せてることがバレてしまう。
パターン2:
『多季ならわたしの協力ナシでもいけるでしょ! 頑張って!』
『ええー…そうかなぁ…でも、わたしなんか…氷華ちゃん、お願いだよぉ…』
『いやだから、多季なら…』
『でもでも…』
『~~~』
『~~』
『略』
(駄目だ! 多季の性格からいくとこれじゃ無限ループだ!)
どちらかが諦めるまで続くと思った氷華はこの作戦を消去した。