氷女子と水男子
水面の真実。
「……だから、ごめん!」
放課後の教室。
「…そっかぁ、氷華ちゃんと…うん、わかった」
そこには、手を合わせる水斗と、少しうつむき加減の多季の2人だけがいた。
「やっぱり、そうだと思ってたよ? だって氷華ちゃんと水斗くん、仲いいみたいだったし…」
多季は笑ってはいたが、目は泣きそうだった。
「だからね、わたし氷華ちゃんに嫉妬して、ちょっと意地悪しちゃった。告白したから、協力してほしいって言ったの。…わたしって最低だね」
「……そんなことない。俺が多季の立場だったら、そうするかもだし…」
「…………、水斗くんは、本当に優しいね。あの日からずっと変わんないよ…」
「…あの、さ」
水斗はずっと疑問に思ってきたことを聞くことにした。
「あの日って…何?」
「……え…?」
多季は驚いたような顔をして、それから切ないような、愛おしそうな顔になる。
「覚えてないのも当然だよね。だって、とても些細なことだったから」
「……あのさ…もし良かったら、聞かせて」
「…わかった、いいよ。あれは、まだこの学校入学してからすぐのことだったなぁ…」
多季は表情を変えずに、懐かしむように語りだした。