氷女子と水男子
そして、翌日。
「……」
緊張しながら多季は教室のドアを開ける。
「おお、おっ…おはよう!」
すぐ近くで話していた女子生徒たちにそう言った。
その女子たちは一瞬目を合わせると、
「……おはよ、多季ちゃん!」
と、言ってくれた。
「あ、あの…もしよかったら、わたしも混ぜてくれないかな…」
「え? いいよいいよ、わたし多季ちゃんと話してみたかったんだ!」
「あー! それ、うちのセリフー!」
そう言う女子たちを見て、多季は笑いながら輪の中に入っていった。
「……わたしの人見知りが直ったのは、水斗くんのおかげなの。水斗くんは、わたしの人生を変えてくれた人」
「……そっか…」
「だから、本当に感謝してるの。……ありがとう」
「大したことしてないけど……」
はは、と水斗は笑う。
多季は続ける。
「それから、好きっていうのに気づいたのはしばらくしてからだった。……氷華ちゃんに負けて、実を言うと悔しい」
「……」
「わたしのほうが先だったのになぁって、思う自分がいるよ……潔く認められないなんて、わたしってホント駄目だね…」
「……」
「…………でも……悔しいよ…」
多季の瞳から、涙があふれ出た。
「……ごめん」
水斗はそれしか言えなかった。それを言うたび、多季は首を横に振る。
「いいの…。わたしだって、いつまでも水斗くんにしがみついてるわけにはいかないから…。わたしには次があると思うから、いい」
「……」
「だけどね? 水斗くんと氷華ちゃんっていう両思いは、一回きりだと思うの。……だから、氷華ちゃんを、大切にしてあげて…」
「……わかった」