君の左のポケットで~Now&Forever~
「レン…」
「あ?」
怒ったみたいなレンの声。
わたしは何となく躊躇して口ごもる。
「あの…ありがと、助けてくれて」
とっさに出た言葉は、そんなものだった。
「…ああ」
レンはまだわたしから視線をそらしたままそっけなく返事をする。
違う。
わたしが言いたいのは、こんな言葉じゃない。
もっと別の、もっと言いたい気持ちはたくさんある。
けれど、言葉が出てこない。
何に迷っているんだろう。
自分でもわからないけれど、わたしはレンを見つめたまま何も話せなかった。
何か言わなくちゃ。
ここで。
そう思うのだけれど、開いた口からは何も出てこない。