君の左のポケットで~Now&Forever~
レンの黒い携帯電話。
わたしがいつも目にしていたもの。
わたしは今こうしてここにいるけれど、でも本当のわたしは、ずっとそこについていた。
自分からレンに触れることも叶わず、溢れる想いだけをもてあましながら。
今ここにいる自分は、一体、誰なんだろう。
わたしは、ナナ?
本当に?
どうしてわたしはここにいるんだろう。
右腕に残るレンの左手の熱っぽさ。
そこを押さえながら、背中にも残るレンの感触を思い出す。
望んでいたレンとの生活が、今わたしのそばにある。
わたしに向けられる視線、かけてくれる言葉、手を伸ばせば触れられる大切な人。
求めていたものが、今、わたしの目の前にある。
でもこれって、何なんだろう。
わたしがここに存在して、レンと暮らせてることの意味って、何なんだろう。
少しづつ、レンとの距離が縮まるたびに、わたしはココロのどこかで思っていた。
いつまで、
こうしていられるんだろう。
もしも、
これがただの夢だったら、わたしは一体、どうなってしまうんだろう。
ヒトになって、こうしてここにいることで、
ストラップでいた時よりも、レンに対する想いは、ますます大きく膨れあがっている。
わたしが望むことも、レンに求めることも、そして、後ろめたさも、大きくなっていくんだろう。
わたしは、それが許される存在なんだろうか。