君の左のポケットで~Now&Forever~
「ナナちん、どこ行きたい?」
適当にふらふらと歩く路の上で、先頭を歩いていたユウ君はわたしに振り向きそう言った。
「行きたいとこ?」
「ない? どっか行きたいとこ」
「どうして?」
「昨日のお詫びで。オレのおごりで」
ユウ君は立ち止まり、えへえへと笑っている。
白い歯が、太陽に染まってきらきら光っていた。
「お、ユウのおごりか」
わたしよりもレンのほうが乗っているみたい。
隣を歩くレンの顔を見上げると、薄茶色に髪の毛が透けていて綺麗だった。
その上の空は水色に澄んでいて、羊みたいな雲が浮かんでいる。
「レンはいいよ、帰っても」
「はあー?」
「ナナちんへのお詫びだもん。お前はいいの」
「何だよ、それ」
ユウ君はあははと笑って、からかうようにレンの肩を叩いた。
向こうの十字路に茶色の猫がゆっくり歩いている。
わたしたちをちらりと見やって、猫はのんびりと通りの向こうに消えていく。
「行きたいとこかあ」
ゆらりゆらりと動いているしっぽを眺めて、わたしは少し考えた。