君の左のポケットで~Now&Forever~
「そうだ…ナナちゃん、これ、ありがとね」

「え?」


ユウ君は、赤いスカーフをポケットから取り出して、わたしに差し出した。


「止血してくれたんだろ? 何とか洗って汚れは落としたから」


きちんとたたまれたスカーフは、色の無い病室の中で何よりも鮮やかだった。


「ナナちゃんに…助けられたんだな」


笑って、だけど切ない顔でわたしを見るユウ君は、助からないことを願っていた。

思い詰めて。

レンを思って。

わたしに悪いと思って。


「ユウ君…あたし…大丈夫。大丈夫だから。
レンも…きっと大丈夫だから…
お願いだから…もうこんなことしないで」


丸まった背中を撫でて必死で伝えた。

ユウ君までレンのようになってしまったら、わたしは耐えられない。

一人で残されたら…生きていられない。




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