君の左のポケットで~Now&Forever~
ゆっくり目を開く。


暗闇に包まれた部屋の中に、いつか見た細い月明かりが差し込んでいた。


レンの匂いの残るソファから身体を起こして深い息を吐くと、

わたしの存在が少しだけ部屋の中に満ちた。



部屋の灯りをつけ、ベッドルームへ向かう。

レンに買ってもらった洋服。

ひとつひとつ開いて確かめながら、きちんとたたみ直す。



ソファカバーで作ったスカート。

そういえば、初めて履いたスカートはこんなだったな…

初めて歩いた街を思い出して苦笑したわたしはそれも丁寧にたたむ。

下着屋さんで見せたレンの顔、あの照れた表情はストラップでいた時にも見たことがなかった。


可愛かったな。


クローゼットの奥に洋服類を閉まうと、少し、寂しさが襲ってきた。

もう、これも着ることなんて無いのだろう。

…ここに、しばらくは置いといてね。

いつか、捨ててしまってもいいから。



キッチンへ向かい、棚の中のものを並べ直す。

お揃いのマグカップを手にする。


これを持ちながら、あのテーブルでたくさん話をした。

切ない会話もあった。

ドキドキしながらテレビを見てた。


そういえばレン、料理には文句もつけたけど、わたしが入れるコーヒーには何にも言わなかったな。

ひょっとして、美味しかったのかな…

今じゃもう、聞けないけれど。



ふっ…と笑うと涙が出そうで、急いでそれを棚に戻した。

他のどの食器よりも寄り添わせて。

ユウ君が遊びに来たら、使ってもらってね。


でも…

女の子は、イヤだな。

そうなっても……仕方ないか。









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