君の左のポケットで~Now&Forever~
レンのポケットに入って、自転車でアパートへ向かう帰り道。
ポケットの中から見る空は、いつも真っ黒で、深くて、遠い。
その深い黒のなかに、
街頭に照らされたレンの顔がぼんやりと浮かんでいる。
夜の空気は、春をすぐそこに控えていても少し冷たくて、
だけどジャケット越しに伝わるレンの体温がわたしを温める。
自転車が横断歩道で止まると、
黒い空に埋めこまれた星たちが微かに見える。
ちらちらと頼りなく光る都会の星。
時々レンは、じっとその星を見上げている。
わたしは、頼りない星の手前に佇む、そんなレンの長いまつげをじっと見つめている。
ただ、じっと。
それしか、できないから。