君の左のポケットで~Now&Forever~
夜は、レンが先にお風呂に入って、その後でわたしが入る。
たぶんこの調子だと、わたしはシャンプーの使い方も、もちろんシャワーの使い方も知らない…覚えていないんだろうと思ったレンは、
お風呂場に並ぶボトルを眺めていたわたしに、シャワーの使い方、シャンプーやコンディショナーの使い方、ボディソープの使い方を教えてくれた。
初めて入るお風呂は気持ちが良くて、わたしは相当な長風呂をしてしまった。
2時間くらいバスルームから出てこないわたしに、心配したレンが脱衣所から声をかけたそうだ。
でも、返事がなかったらしい。
わたしはお風呂のなかでのぼせてしまっていた。
気づいたらベッドの上に寝ていた。
おでこに冷たいタオルの感触があった。
「あれ?」
「あ、気づいた」
「お風呂は?」
「のぼせてたぞ」
「え?」
「湯船のなかで、べろ~んって」
「ええ?!」
「別に、じっくりは見てないからな!」
レンは照れて、怒ったみたいな口調で言い訳をしていた。
(最初の日、見られちゃってるから、別に見られても平気なんだけど)
そう思ったけれど、レンの照れた顔が可笑しくて、わたしはただ笑った。
「なにが可笑しいんだよ。勝手にのぼせて」
レンは唇をとがらせながら冷蔵庫から牛乳を取り出して、
テントウムシの絵が描いてあるグラスに注ぎ、まだ熱い身体で横になるわたしに差し出した。
優しいヒト。
グラスを受け取って、わたしはそう思った。