君の左のポケットで~Now&Forever~
寝るとき、優しいレンは、わたしにベッドを貸して、自分はソファで寝る。
「一緒でいいのに」
そう言うと、レンは一瞬固まって、けれど「いや、いい」と、ふて腐れたみたいに言ってソファに横になる。
ストラップの白クマだったときは、いつも一緒に寝てたのに。
レンの寝顔が見れたのに。
程よい距離にあったレンの顔が随分前のことのように感じられて、わたしは少し、寂しくなる。
ベッドに横になると、背を向けているソファはレンを隠して、寝顔どころか姿も見えない。
「レン、おやすみ」と小さく言うと、
「おやすみ」とレンも小さく応える。
妙な感じの沈黙がちょっと苦しい。
ちくちくと、時計の音だけが聞こえる真っ暗な部屋には、こういう時に限って遠くで鳴く犬の声すら入ってこない。
ふたりともなかなか寝付けないのに、無言のままだ。
わたしは身を堅くして、レンの寝息を聞こうと耳をすましてみる。