君の左のポケットで~Now&Forever~
時計の針がちくちくと60回くらい聞こえたあと、レンは急にがばりと起き上がった。
「そうだ!」
「なに?」
急に起き上がったレンにびっくりして、ソファの向こうに見えるレンの上半身を見つめた。
「ナナ、なんてどう?」
「え?」
「いきなりここに来て、一週間…7日が経つだろ?」
「うん」
「だから、ナナ」
レンは立ち上がり、得意げに声を張り上げている。
暗闇で目を凝らすと、レンが振り向いたのがわかった。
「なにそれ」
なんだか単純な発想で、レンの陰を見ながらわたしは笑った。
「へん? 可笑しい?」
「ううん、いい。可愛い」
「よし。じゃあ、ナナで」
「うん」
(ナナ…わたしはナナ。レンの、ナナ)
レンにつけてもらった名前を頭のなかで繰り返していると、
すうすうというレンの寝息が聞こえてきた。
わたしは7日目から、白クマじゃなくて、ナナになったんだ。