あの日の朱雀
「ちょ、ちょ…」
早歩きの朱雀さん。
ふと、不良に絡まれたときの事を思い出した。
「…。」
朱雀さんが自動販売機の前でとまる。
「あの…」
「なんだよ。」
朱雀さんが低い声で言った。
「飲み物…」
買わなくていいんですか、が出てこない。
「おまえ、何があった。」
少ししゃがんで、朱雀さんが私と目線を合わせる。
赤い瞳に心を掴み取られそうだった。
「えっ…」
私は声が詰まって言えないままだった。