あの日の朱雀
「幸せは自分で掴め。そうやって俺は生きてきた。」
「…っ…」
「覚えとけ。人生は甘くない。」
「…まって…っ」
「俺はお前が邪魔なんだよ。」
「お兄ちゃんっ…」
「妹なんかいらねぇの。」
ココロが割れていく。
「親父の連絡先はここだ。」
メモ用紙に書かれた電話番号。
「じゃあな。夕空。」
私の背中を押すお兄ちゃん。
「あ、そうだ。」
階段にうずくまる私の目の前に背中を向けるお兄ちゃん。
「お前の名前。俺がつけたんだ。」
「…っえ…」
「あの日は綺麗な夕空だったからな。」