あの日の朱雀
ようやく泣きやんだ私の体力は、もう限界だった。
「とりあえず、名前は?」
傘を差さなかった朱雀の髪は、雨でびしょびしょだった。
「…ゆ…ら」
歯が震えてうまく喋れない。
「ゆら?」
私はコクンとうなずいた。
「じゃあ、ゆら。俺の家来い。」
私は静かに顔を上げた。
「そのままおまえを帰したら、途中でおまえ倒れるだろ。」
傘を拾い、差し出してきた。
「待ってろ。チャリとってくる。」
その人が走り出そうとしたとき。
私は声を絞り出していった。
「名前はっー」