あの日の朱雀
「いいよ。」
そう言って、大きな手が私の手を握った。
「その可愛い笑顔があるから、俺、頑張れるんだ。」
照れくさそうに笑う桂馬さん。
「参ったな。これじゃ朱雀に返す時、俺が未練タラタラだ。」
「…はい…」
桂馬さんは、たまにこういう事を言う。
私は、早く朱雀さんに会えるようになりたい。
前みたいな私になりたい。
でも…ココロの中に引っかかる、桂馬さんの存在。
私は、この人を置いていけるだろうか…。
「夕空?」
「あっ…」
我に帰る私。
「ほら、見てみ。」
桂馬さんが夜空を指差す。
「あっ…」