あの日の朱雀
「これを…夕空に渡したかったんだ…」
桂馬さんの手の上に、暗がりに光る何かが乗ってる。
「…あっ…」
指輪…?
「…やっぱりさ、俺の所にいなよ。これからもずっと…。」
桂馬さんが夜空を見ながらつぶやく。
「俺さ…ずっと朱雀のところに帰してあげようと思ってたんだけどさ…」
桂馬さんの瞳が、涙で濡れ始める。
「やっぱ、ダメだ。俺…お前とお別れなんてできないっ…」
優しい腕が、私を包む。
「桂馬…さん…」