あの日の朱雀







朱雀の香りと大きな翼。






「もういい。おまえは言ってもわかんねぇから。」






抱きしめられた私の体は、寒さで震えているんじゃない。



うれしくて…泣きそうだったから…






「もうどこにも行くな。桂馬のとこも。どこにもだ。」






涙で震える声。






「うんっ…」






私は少しだけ小さくなった朱雀さんの背中にしがみついた。






「ずっと…神様に謝ってた。」
















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