あの日の朱雀
「うっく…っく…」
朱雀さんの腕の力が強まる。
「言ったろ?俺は大切な人に泣かれるとこたえる。」
「…えっ…」
抱きしめていた腕をゆっくりとほどいて、朱雀さんは私の顔を見つめた。
「今は言わない。でも、これだけは言う。泣くな。」
そういって、また私を抱きしめた。
「大地って奴の為に…泣くなよ。頼むから。」
泣き出しそうな朱雀さんの声が、私の涙をおさえた。
「朱雀…さん…」
私も朱雀さんの大きな背中をだきしめた。