あの日の朱雀



朱雀さんはゆっくりと話し始めた。



「俺も昔はバカでさ。
バカに混じって、結構グレてたわけ。
何より姉貴がな、この辺では有名な
ヤンキー”紅”だったわけ。
だから”紅”の名を継いで、バカの
代表みたいな感じだったんだよな。」




カップに注がれたお茶を、朱雀さんはすすった。




「ケンカもそこそこ強くてさ。
いつの日か”鬼の朱雀”って呼ばれる
ようになっちゃってさ。
俺はそこまでいくなんて思ってなかった。
だから2年前。高校卒業と同時にグループを
やめたんだ。」



「…」



「成績なんて体育しかとれてなくてさ。
体育の教師になろうと思って、必死に勉強した。
それで、今の大学に入った。
でもやっぱりさ、この怖いオーラは取れなくてな。
大学でも正直1りぼっちって感じなんだ。
頑張って2年間。諦めかけてた時、あの雨の日。
おまえに出会った。」




優しい瞳でこちらを見る朱雀さん。













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