あの日の朱雀





「うちね…両親いないんだ…」




朱雀さんは黙ったまま私の頭をなでていた。




「小さい頃にお母さんが病気で死んで。
8歳の時までお父さんに育てられたの。
でもお父さん、仕事で一緒だった人と
再婚して。あたし達を置いてったの。」




私は朱雀さんの胸に顔をうずめて涙をこらえた。




「その時12歳だったお兄ちゃんに、お父さんは
莫大なお金を残したの、
お父さんは病院の院長さんだったからね。
そこから私達2人だけの生活が始まったんだ…。」




そう。



思い出せば鳥肌がたつ。



あの地獄のような日々。

















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