ある日、突然。
「開けてみてください」
警察官は、妻の携帯を開けるように言った。
僕は言われるがままに、妻の携帯電話を開けた。
かちっと音がする。
妻が携帯電話を触るたびに、聞いていた音だ。
「・・・これは」
薄暗い廊下に、ぼんやりと光が灯る。
「奥様、轢かれる前に、メールを打っていたようです」
たった数行。
たったの、たったの数行。
妻の最期の言葉を、僕は知った。
この時初めて、僕はその場で泣き崩れた。