霊感少年とメリーさん
一方、メリーは自分の問いかけに応じない陽一の態度に、胸が苦しくなった。ただ、陽一を守りたくて護衛をしているのに、外に居ては自分の存在の意味が無くなってしまう。
メリーはベランダに降りて、瞼を閉じている陽一に近づいた。そして、今にも消えてしまいそうな声で話しかける。
『こんな所で寝たら、風邪ひいちゃうよ……。お願いだから、部屋に戻ってよ』
ただ、切ない声で陽一に話しかけた。
「俺の気持ちが分かったか?」
瞼を閉じたまま、メリーに話しかける陽一。瞼を開けて、真っ直ぐな瞳を向けた。
陽一の言葉と態度に、はっと気付いたメリー。そして、顔を俯いたまま、気まずそうに口を開いた。
『そう……だよね。言っている側は、悲しい気持ちになるよね……』
メリーは、陽一がどれ程自分の事を心配してくれていることに気が付いた。
死んだ人間を心配してくれるのは、きっとこの少年だけだろう。心優しい少年の気持ちは、幽霊にとって嬉しい。だからこそ、譲れない想いがある。だから-----。
『ごめんなさい。やっぱり、家の中に入れない。何かあってからでは、手遅れになってしまう。だから、私は……!?』
陽一に想いを伝える途中で、頭にげんこつをされる。ただ、今の状況を理解する事が出来ず、げんこつされた箇所を両手で押さえながら陽一を見つめた。
しかし、そのげんこつには力が入っていなくて、痛みはそんなに感じない。それでも、何が何だがよく分からなかった。
すると、陽一は長い溜息をつきながらメリーを睨む。しかし、メリーが自分の置かれている状況が分かっていないのを確認して、内心呆れながら口を開いた。
「俺は、お前に護衛をしてもらう為にパートナーになったんじゃない。一緒に悪霊を退治する仲間として組んだんだ!お前が体調を崩したり、ちゃんと休んでくれないとこっちが困るんだよ!それぐらいも分からないのか?!」
陽一は、今まで我慢していた不満をメリーにぶちまけた。そして、全てを言い終えてスッキリした表情をする。
しかし、陽一の言葉にメリーはただ驚いて、恐る恐る口を開けた。
『どうして、私を生きている人間と同じ扱いをするの?だって、私は死んだ人間で幽霊なのよ?』
メリーは、陽一が自分を生きた人間と同じ扱いをする事に疑問を感じた。メリーの言葉を聞いた陽一は、何も躊躇わずに口を開く。
「お前は……いや、お前達は生きているだろ」