霊感少年とメリーさん
「安心しろ!皆も助けるし、自分の命も守る!」
無茶苦茶な発言に、メリーは頭を抱える。これ以上何を言っても無駄な事だ。ならもう、腹をくくるしかない。
『分かったわ。何があっても、絶対に貴方を守る。だから、私から離れないで』
「あぁ!頼りにしてるぜ、メリー!」
二人は意気込んで、校舎に向かう。1階の校舎に足を踏み入れた途端、上の階から多数の人の足音が聞こえてきた。足音の正体は、操られている生徒だと察する。
『陽一、私に考えがある』
少し経ってから、生徒達が降りてきた。陽一の姿が見えずに辺りをキョロキョロと見渡していた。すると、体育館に続く通路に陽一がいた。
「皆、俺はここだ!来いよ!」
陽一の声と共に生徒たちは、走り出した。生徒達が、全員通路に出た途端、通路に設置してある蛇口から大量の水が溢れだして生徒に向かう。水は、生徒達を囲むようにドームの形になった。その途端、先程まで活動していたクラスメイトが膝から崩れ落ちるように倒れ込む。
「お前の作戦、成功したな」
『えぇ。水のドームで、悪霊からの邪念の力を絶ち切ったわ。これでもう、彼らは操られる事はない』
陽一は、ドーム内に倒れ込む生徒を確認すると、眉間に皺を寄せて、焦りの表情に変わる。
「やっぱり俺のクラスだけだ。他の奴らや、慶太たちも居ない」
『もしかすると、これだけの人数を操るのが、限界かもしれないわね。他の生徒の安否も心配ね』
再び、メリーは手のひらを蛇口の方に向ける。陽一の足元に水が集まり、徐々に水は大きな鷲へと変貌する。
『陽一は、水鷲の背中に乗って。確認出来るクラスを見に行きながら、悪霊の所に向かいましょう』
陽一は言われるまま水鷲の上に乗る。すると、冷たさを感じるが、触っても濡れたりせず、柔らかい感触が、体を包み込んだ。
「水鷲、すげなー!」
『落ちないように、しっかり捕まってね』
陽一は、落とされない様に水鷲に捕まる。メリーが先頭を行くと、水鷲もも動き出す。少し進むと音楽室が見えた。ドアに付いた小窓から中を覗き込むと、慶太と慶太たちのクラスメイトが床に倒れていた。
「慶太!待ってろ、今助けーー」
突然、ザアザアと砂嵐が聞こえ、校内放送を知らせるチャイムが鳴り出す。
【織原くん。こんな所で、寄り道をしててもいいのかな?】
「松下先生!他の奴らに、何をしたんだ?!」
スピーカーから松下先生の声が聞こえているが、思わず話し返す陽一。
【他の生徒たちは気絶をしているだけだよ】
『こちらの声が聞こえているの?』
普通のスピーカーから、こちらの声は聞こえないはずなのに、まるで目の前で会話をしている感覚になり、焦りを隠せないメリー。