霊感少年とメリーさん
『なら、武器を渡さねぇとな。力があるからと言って、丸腰で退治させるわけにもいかないしなぁ』
ボスは、机の下から重そうに大きな木箱を取り出して机の上に置く。その木箱を開けようとするが、その手を陽一に止められてしまう。
「その必要はない。俺にはこれがある」
陽一は、肩に掛けていた竹刀袋を机の上に置く。竹刀袋から、丁寧に竹刀を取り出してボスに見せる。
『お前…これで退治するつもりか?』
ボスは、竹刀を指さしながら再度確認をする。これが、ボケならまだいい。しかし、陽一は凜とした顔つきで言っている。陽一の性格を考えて、冗談を言う様にも見えない。
「例え、悪霊でもあいつらは同じ人間だ。だから、なるべく傷つけたくない。それに、この前戦った時に折れなかったしな」
陽一の答えを聞いて、ボス達は口を開けてポカンとした。普通なら、自分の命を狙ってくる輩がいたら、問答無用で攻撃をする。
しかし彼の場合、悪霊を傷つけたくないと答えた。彼は巻き込まれているのに、何処までお人好しなんだと肩をガクっと落とす。
しかし、それもまた陽一らしいと、ボスはフッと含み笑いをして納得をした。
『…そうか。お前がそれを使いたいなら使え。それとちょっと貸せ』
ボスに言われ、陽一は大人しく竹刀を渡す。竹刀を受け取ったボスは、机の上に置く。竹刀に手を近づかせ、呪文のようなものを唱える。
すると、手に黄緑色の小さな光が集まる。その光は、風のようにボスと陽一の髪をなびかせた。そして、集まった光を竹刀の中に押し込むように入れた。それと同時に、風は止み、陽一は一体何が起きたのかを知るため慌てて口を開く。
「何したんだ?!」
さっきの現象に疑問を抱くのと同時に、疑いの目を持つ。今日、陽一が持ってきた竹刀は、自分が持ってる中でも一番のお気に入り。ボスに、変なことをされたんじゃないかと不審に問う。
『俺の力を少し加えた。後、壊れにくくした』
「何の力だ?」
『それは、使ってからのお楽しみだ』
ボスは悪戯っぽくニカっと笑う。そんな笑顔を見た陽一は、面倒くさそうな力じゃないことを心の中で願う。もしも面倒くさい力で、竹刀が壊れたらボスに修理代の請求をしようと考える。
『よし。これでお前との契約は終わりだ。後は、メリーとの手続きをしないといけない。悪いが、待っててくれるか?』
「……分かった」
本当は、待つという行為が面倒くさいので帰りたい。しかし、待たないと後からボスやメリーに文句を言われそうで、それはそれで面倒くさいので仕方なく我慢をすることにした。