霊感少年とメリーさん



『と、言っても手続きが長引くかもしれないしな…。有奈。織原をあそこに案内してやれ』

『分かりました。織原くん、私についてきて』

「は、はい」


突然、有奈に呼ばれて陽一はぎこちなく返事をしてついて行く。さっきの大きな場所に出て、南の方角にある通路へと進む。真っ直ぐな通路をひたすら進み、有奈はドアを開ける。


ドアを開けると、さっき見た中庭へと出た。石で造られた道があり、その上を歩く。陽一は、ふと空を見上げた。澄み切った青空と強い日差しを放つ太陽の光が、陽一の肌をチリチリと焼く。


そして、傍らに花壇に植えられている花が気持ち良さそうに風に吹かれ揺れていた。陽一は現世でも見る光景に、この空間が自分達が住んでいる世界と別なんだと認識が出来なかった。


そんなことを考えていると、目の前に建物が見えてきた。中庭とさっき居た場所から離れており、木造で出来た大きな建物は寂しそうにポツンと建っていた。


陽一達は到着し、木製で出来ている横開きの扉を開く。陽一は、中から匂ってくる独特の木のにおいに反応する。嗅いだことのある匂いで、この建物がなんなのか分かり嬉しくて口元が緩む。


その場所は、陽一がよく知る道場だった。武志が持つ道場とは違い、中も綺麗に整備がされており、床は自分の姿がはっきりと映るほど綺麗に掃除されていた。


今度は辺りを見渡す。面積は、さっきの広場よりも数倍大きい。奥には機械の様なものや、刑事ドラマにも出でくる人の形をした標的がある。


『ここは、退治専門の幽霊がトレーニングをする道場よ。ゲームみたいに遊べる物もあるあから好きに使ってね』


『はい。ありがとうございます』


陽一は、立ち去る有奈に機嫌良く返事をした。


さっそく、陽一は近くにあった機械に近づいて何を使う物か調べる。その機械に何か書かれており覗いて見ると、“ターゲット!”と書かれていた。

陽一は面白そうと目を輝かせ、竹刀袋から竹刀を取り出して興味津々に説明文を読む。


「“このゲームは、障害物の真ん中に張られている青のマークに攻撃をします。一つの障害物に対して10ポイントとなります。制限時間1分で、たくさんの障害物を攻撃してください”

……へぇ、面白そうだな。これにするか」


陽一はターゲット!を気に入り、スタートと書かれた赤いボタンを押す。すると、上からゴゴゴと重い音が響き渡り、不思議そうに上を見上げる。しばらくすると、音が止んだが何も起こらなかった。



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