霊感少年とメリーさん
「何も起きねぇ---ふご?!」
上から落ちてくるんじゃないかと期待を裏切り、突然真下に四角に空いた穴が現れた。
そこから、シュッと空気を切り裂くような音と共に青のマークが付いたボクシングのグローブが出現。グローブは陽一の顎を目掛けて攻撃をする。
唐突な攻撃により、陽一は避けきれず顎に攻撃を受けた。あまりにもの強すぎるダメージに、仰向けで倒れる。一方、グローブは満足したのか四角の穴へと戻り、何も無かったような平凡な床へと戻った。
そして、陽一が倒れ込んだのと同時に上から青のマークが付いた障害物が何体も現れた。
「~~ッ!おい、もうちょっとで舌を噛む所だったろ!殺す気満々だな!てか、上の障害物出てくるの遅すぎだろう!」
ヒリヒリとする顎を右手で押さえながら、抑えきれない怒りの感情をはき出す陽一。すると、機械の上に付いている煙突からキャラクター風なウサギのぬいぐるみが出てきた。
真っ白な毛並みに、ルビーのように赤いつぶらな瞳。女の子なら、飛びついて抱きしめたくなるような愛くるしいウサギ。
「コレハ、申シ訳ゴザイマセン……チッ。シクジッタ。テカ空気読メヨ。普通ココハ、舌ヲ噛ミ切ル所ダロ……オ怪我ハアリマセンカ?」
「心の声だだ漏れだぞッ!てか、なんで俺が空気読む為に死なないといけないんだ?!」
可愛らしい容姿と声とは裏腹に、腹黒い発言を投下するウサギ。純白に輝く毛の下は、とんでもないものを隠し持っていた。
「ポイントモ取レナイ分際ガ盾ツクナヨ。ミットモナイ」
陽一に本性がばれてしまったウサギは、チッと短く舌打ちをして鋭い目つきで見下す。
「腹立つな、その顔ッ!今すぐ毛皮剥いで、ぞうきんにしてやろうか?!
てか、何なんだこのゲーム!ビックリするぐらい楽しめねぇよ!有奈さんは鬼か?!」
何故、腹黒ウサギなのか理由があった。ターゲット!の機械の横に字が書かれているA4の紙が貼られていることに。
その紙には、“メンテナンス中。絶対に使うな!”と記されていた。そもそも、紙に気付かない陽一が悪いが、それを伝え忘れた有奈も悪い。
「ソンナニ、文句ガアルナラ止メレバ?悔シカッタラ、死ンデ一昨日キヤガレ」
またしても、下から陽一の顎をめがけて狙ってくる。
しかし、今度は顎には当たらず、ブローブについてるマークを両足で踏み、グローブの飛び出してくる力を利用して上に吊されている障害物に向かってジャンプをする。その勢いで、竹刀を振りマークに攻撃をする。
アクション映画のように華麗に着地した陽一は、得点のスコア欄を見る。スコアには、20点と表示をされていた。
「おい、腹黒ウサギ。生身の人間なめんなよ……!そんなに、俺を亡き者にしたいんなら殺(や)ってみろよ!」
陽一は鋭く睨みつけ、腹黒ウサギに宣戦布告をする。この負けず嫌いの精神が、新たな波乱を呼ぶとはこの時の陽一は知るよしもなかった---。