霊感少年とメリーさん



『まだ、分からないのか?なら、さっき貴様が避けた時、床に穴が空いただろう?それは、俺が貴様を叩き潰そうとしたからだ。そして今---』

次の瞬間、少年は躊躇うことなく床に刀を突き立てた。刀身が、半分まで沈まったのを確認してから、一気に引き抜く。

そこには、刀傷が出来ていた。その光景を見た陽一は、自分の予想が大きく外れ動揺をする。もし陽一の仮説が正しいのなら、今の衝撃で床に穴が空くはずだった。

しかし、そこにあるのは穴ではなく刀傷。

『俺は、この床を斬ろうとした。ここまで言えば、分かるよな?俺は、メリーと同じ系統の特殊能力だ。自分が、操る物質の形や固さも自由自在に変えられる。

俺が斬りたいと願えば、刀身は鋭く刃の様になる。俺が潰したいと願えば、刀身は金棒の様に固くなる。俺が刀を欲しいと思えば、いつでも作り出せる』

貴様に勝ち目はない、と一言を付け足して口の端を上げた。しかし、陽一は少年の力に驚ろいたが、戦う上では問題ないと考える。なぜなら。

「確かに、お前の力は凄い。だけどな、俺は無効にする力を持ってるから、そんなのは関係ねぇんだよ」

陽一は、自分の力に自信を持っていた。少年がメリーと同じ力ならなおさらだった。以前に、メリーが作り出した水の壁と悪霊が操っていた石を壊した。その経験から、少年の力も無効化に出来ると確信した。

しかし、陽一の力を知っても、何処か余裕の表情を浮かべる少年。そして鼻で笑い、勝ち誇った表情を向ける。

何かに集中する表情で、陽一に向けて右手をかざした。

『なら、貴様の力がどんな物か見せもらう。木よ!我の問いに応じ、愚者を此処に止めさせ!』

少年の詠唱と共に、木製で出来ている練習場の床はメリメリと音を立てる。音が鳴り止むと、陽一の真下にある床が細長い紐状へと変貌を遂げ、蛇のように陽一の両足と両腕に何本も絡みつく。

「?!何だよこれ?!」

少年の力に見とれてしまい、逃げる機会を失う。手足に絡まる木を、竹刀で壊し続ける。すると、前から鋭い殺意を感じて構えようと向いた途端。

『遅い』

少年の言葉と共に、竹刀を持つ右手に衝撃が走る。慌てて見ると、竹刀の先端は、少年の左足で床へと踏み付けられていた。

力任せで、少年の足をどけようとするが、右腕に絡まった木が強く締め付けて身動きが取れなくなる。

『確かに、俺が作り出した縛木(ばくぼく)を壊せたのは褒めてやる。だが、貴様の力が凄かろうと、隙を見せたら終わりなんだよ』

そして、少年は口の端を上げながら、刀を陽一の頭上よりも高く真上に上げる。

クソッ!!こんな所で殺されてたまるか……!

陽一は、最後で諦めずもがいた。

『ははッ!俺の勝ちだ『いい加減にしなさいッ!』ゴフッ?!』

勝ち誇った表情で少年が陽一に刀を振り下ろした瞬間、何者かが少年の横腹を目掛けて飛び蹴りをする。

見事に飛び蹴りを喰らった少年は、ズザァァと体と床が擦れ合う摩擦音と共に数メートルふっ飛ばされた。



< 94 / 119 >

この作品をシェア

pagetop