霊感少年とメリーさん



---今日から、私が彼を護る。もう、あの時の様に危険な目に遭わせないように、しっかりしなくちゃ。

一方、何も知らないメリーは、自分を奮いただせながら道場へと向かう。ボス達に、自分の胸の内を明かしたメリーは、凜とした顔つきになっていた。

本当は、彼のパートナーを任せられるのは、桐夜だと思っていた。だけど、ボス達は、私に任せてくれた。だから、私は期待に応えなくちゃいけない。もう、あの時のようにならないように、彼を悲しませないように強くならなくちゃ!

メリーは、道場の扉の前に立ち、気合いを入れるように両手で頬を叩く。そして、意を決して扉に手をかけて引いた。

『遅くなってごめんなさい。ちょっと、ボスと話をしていて……』
『てめぇ!さっきは、よくもやってくれたな!これでも喰らえ!』
『その程度で、このあたしに勝てるとでも?嘗められたものね!』
「お前等、いい加減にしろ!外でやれよ!」

メリーは、目の前の光景に言葉を失う。刀を持って走り回る桐夜と、凛々しい顔つきで桐夜の攻撃を避けながら、回し蹴りをする美佳南。そして、二人に巻き込まれた被害者の陽一はブチギレ。

収拾の付かない状況に、ガクっと肩を落とす。桐夜と美佳南は、喧嘩する程仲が良い。G.S.S内で、知らない人は居ない。

だからこそ、一度喧嘩が始まれば、メリーの力ですら止める事が出来ない。

『くらえ!』

一方、メリーの心配を他所に、桐夜は力を使う。手を美佳南に向けてかざした途端、床がメリメリと悲鳴を上げた。

バリっと床から剥がされた木の板は、細長く形を変えて、何本も美佳南に襲いかかる。

『ふん!餓鬼が調子に乗るな!』

襲いかかってくる木を、空中で回転しながら華麗に避ける。床に着地をして、拳を構えて桐夜との間合いを詰める。

ヒュっと空気を切り裂く音と共に、美佳南は足で円を描く様に桐夜へ回し蹴りをする。桐夜は、焦った表情を見せず、余裕の表情でそれを避けた。

間一髪に避けられたため、回し蹴りは空振ってしまい態勢が崩れる。美佳南の足が床に着地した途端、バキッと床が悲鳴を上げた。美佳南の足を中心に、周りがへこむ。

美佳南は、舌打ちをしながら態勢を整える。ぐっと左手の拳を腰に構えて、物凄い速さで桐夜に詰め寄る。

一方、桐夜は迫り来る美佳南に顔色を一つ変えない。美佳南が桐夜に近づいた途端、妖しく口の端を上げる。走り寄る美佳南の足下に木が絡みつこうと襲いかかる。美佳南は、危険を察知して上へとジャンプする。

しかし、下に居るはずの桐夜が目の前に居た。桐夜は、刀を美佳南に斬りかかろうとするが、間一髪に左へと避けられ舌打ちをする。そのまま、二人は着地をして顔を見あわせる。

()り損ねたわね、桐夜』
『あんなのは、ただの準備運動だ。それに、貴様をその程度で殺れるとは思ってもねぇよ』

傍から見れば物騒な会話をしているが、当人達は楽しそうに会話をしている。

まだ、彼等が本気を出して喧嘩をしていないことに、気がついたメリー。このままだと、この喧嘩は終わらないと悟った。

これ以上暴れると、この道場も彼も危ない!2人を止めなくちゃ……?!

桐夜達を止めようとした時、何処からか不穏な空気が漂ってくる。その先を辿ると、額に青筋を浮かべ、竹刀を力強く握りしめた陽一が居た。そして、陽一はニヤっと妖しい笑みを浮かべた。

「お前等が、仲良しなのはよーく分かった……。だから、2人仲良く叩き斬ってやる!!」

いつまで経っても、喧嘩を止めない二人にブチ切れた陽一は、竹刀を構えながら二人の元へと駆け寄る。

メリーも、陽一達を止めるために傍へと駆け寄ろうとした瞬間、まばゆい光が道場中に溢れる。あまりにものまぶしさに、4人は目を瞑ってしまった。




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