霊感少年とメリーさん



眩しい光は、ほんの数秒で徐々に薄くなっていく。ようやく、4人は目を開けられる状態になった。すると、何処からか溜息が入り交じった声が聞こえてきた。

『何やってんだ、お前等』

そこには、扉にもたれているボスと、傍には有奈が居た。ボスは、桐夜と美佳南を見て、またもや溜息をつきながら手で頭を抑える。

いつもの事だと分かっているが、さすがに今回ばかりは見逃す事が出来なかった。なぜなら---。

『これは、随分と派手にやったもんだな』

道場の床は、広い範囲でたくさん剥がれていた。なによりも、大きな穴がいくつも空いていたのだ。これが誰の仕業なのかはすぐに分かり、冷たい眼差しで桐夜を睨み付ける。

『ち、違うんだ。これは、その……美佳南が、練習に付き合って欲しいって頼むから、俺が手加減できなくて、美佳南が床に穴を開けたんだ』
『はぁ?!あんた、あたしに責任を押しつけるつもりでしょ?!もとはと言えば、桐夜が陽一くんに手を出すから、こうなったんじゃない!』
『うるせぇ!元々、貴様が俺に跳び蹴りをするからだろう!』

ボスの冷たい眼差しに耐えられず、美佳南を巻き込んで嘘をでちあげる桐夜。

その嘘に巻き込まれた美佳南は、ブチギレ桐夜の胸倉を掴んで反論する。桐夜も美佳南の胸倉を掴んで文句を言う。2人でギャーギャーと言い合ってると、互いに悪寒を感じて言い合いを止めた。

そして、恐る恐るボスの方へと振り向く。そこには、笑顔ではあるが目の奥は笑っておらず、怒りで満ち溢れているボスの姿があった。

『とりあえず、道場の修復が優先だ。隅から隅まで2人で綺麗に直してから、言い訳をしてもらおうか』
『『はい……』』

何も言わせないボスの威圧に、体は自然と正座をしていた。ボスに頭があがるはずもなく、2人は今にも消え入りそうな声で返事をする。

彼等の一部始終を見た陽一は、冷や汗をかきながらメリーの元に近づき、耳元でボスに聞こえない様に話しかける。

「……なぁ、ボスって怒るとあんなに怖いのか?」
『……うん。普段は、優しいからその分、怒ると怖いの』

メリーから聞いた陽一は、何があってもボスを敵に回して怒らすのは止めようと、心に誓う。

一方、ボスに怒られた2人は、黙々と道場の修復を始めた。その光景を見た陽一は、自業自得だと思う反面、気の毒だなと複雑な気持ちで一杯になる。



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