Dear my Dr.
悠ちゃんは、アメリカで偶然会った鳴海さんと連絡を取っていたらしい。

“もし日本で就職するなら、いい病院を教えてあげるよ”

そう言って、伊崎総合病院を紹介して、院長である私のお父さんにも口を利いていたらしい。

いつの間にそんなことを…

「あとは本人達しだいだろ?」

「そこまで近づけておいて、そんな風に言えるの~?」

「僕は“きっかけ”を作っただけだよ。恋愛なんて、最終的には本人達しだいなんだから」

「悠ちゃんって案外策略家なのね」

感心したように言うと、悠ちゃんはとぼけた顔をして言う。

「そりゃあ美波と結婚するために、色々と作戦を練ってきたわけだから、慣れてるよ」

「作戦!?」

「理事長のおじいさんに、手紙を書いたこともあったんだから」

「おじいちゃんに?」

今、伊崎病院グループの理事をしている、実のおじいちゃん。

孫にはめちゃくちゃ甘い。

今は引退してるけど、昔は怖い外科医だったらしい。

「おじいちゃん、すぐに結婚を許してくれたの?」

「許してくれたけど、条件があった」

「条件って?」

「美波がハタチになるまで、指一本触れないこと。あと、一人前の男になるまでは、結婚は許さないってさ」

そういえば、顔合わせをしたものの、研修医を終えるまでは会いに来なかった。

研修医を終えた4月の夜、迎えに来てくれた日のこと、覚えてるよ。

「そんなの全然知らなかった」

「僕の必死さ加減を見られたくなかったんだよ」

「そう?必死な悠ちゃん、好きだよ」

好きって言った私の目を、まじまじと見てニッコリ。

「僕も美波を愛してるよ」

胸がきゅうってなる。

悠ちゃんの大きな手が、私の頬をなでる。

心地よくて目を閉じる。

幸福感に包まれる。
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