Dear my Dr.

記念日

「もうすぐ結婚記念日だね」

カレンダーを見ながら、悠ちゃんがのんびりと言った。

「1年、早かった?」

「うーん、長いようで短かったな。美波はどう思う?」

「私は…充実してた!だから、なんとなく短く感じたかなぁ」

留学が決まって、結婚して。

一緒に住んで。

家族が病気になって…

乗り越えて。

思い返せば、色んな事があった。

その中で、まだ全然知らなかった婚約者様のこと、色々知った。

もちろん、好きだったから結婚した。

でも、まだその“好き”は序の口で、今はハッキリと言える。

“悠ちゃんのこと大好きだよ”って。

これから2人で歳を重ねて、いつか子供ができて、家族が増えるたびに幸せを感じられるんだろうな。

「何が欲しい?」

「え?」

「結婚記念日だよ」

「何もいらないよぉ~」

「でも、記念じゃない?何か形に残るもの欲しくないの?」

お金があるからじゃなくて、この人の人柄だったり、私への愛情だったりが、私の心をつかんで離さないんだ。

「だって、今欲しいもの…思い浮かばないんだもの」

「じゃあ、指輪にしとけば?」

「どうして?」

「“お嬢様にふさわしい、この店で一番高い指輪をください”って言ってあげる」

芝居っぽく悠ちゃんが言ったから、思わず噴き出した。

そのセリフ、ちょうど1年前のこんな夜。

マリッジブルーの私に言った言葉。

そんな冗談を言いながら、これからも2人で支え合っていこうね?
< 117 / 120 >

この作品をシェア

pagetop