Dear my Dr.
「伊崎さんが抜けると大打撃だわ」

そう言ってくれるのは、入社したときから直接お世話になってる先輩。

「特にね、海外との取引のとき。通訳代わりになってくれて、すごく助かってたもん」

「ありがとうございます」

外ランチ日和の天気。

この時間が好きだった。

これも、あと少し、か。

そう思うと寂しい。

「実はね、私も結婚するんだ」

「え!ホントですか!?」

「うん」

「えー、おめでとうございます!」

先輩はちょっと照れながら笑った。

「でも仕事は続けるつもり。彼がけっこう不安定な職業で」

「何されてるんですか?」

「写真家の卵?」

「へー!かっこいい!」

「みんなそう言うけどねー。実際食べていくのに必死なのよぉ?」

そうやって愚痴を言うけど、幸せオーラたっぷり。

いいなぁ。

なんか比べちゃうな。

「だから式も指輪もなし!伊崎さんが羨ましいよー」

…私は、先輩が羨ましい。

正直な気持ち。
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