Dear my Dr.
「お疲れ様でしたー」

一人、また一人と帰っていく。

私はまだデータ修正と闘っていた。

あぁ、もう8時。

「伊崎ー、もう明日でいいから。キリのいいところで切り上げて帰れよ」

最後の一人、課長にそう言われる。

「はい、でも、もう少しなので!」

「そうかー?じゃあお先にー」

「おつかれさまでした!」

きっと、あのイヤミな先輩は、今頃笑ってるんだろうな。

ここで帰ったら負けな気がして、絶対今日中にするって決めた。

目が疲れる…。

目薬をさして、気合いを入れ直す。

よし!もうちょっと!

その時、ケータイのバイブが鳴ってることに気づく。

……悠ちゃんだ。

一瞬迷って、通話ボタンを押す。

「…もしもし?」

『美波?今どこ?』

「まだ仕事中だよ」

『まだ?もう9時だぞ』

「だって…仕事が終わらないんだもん」

ちょっと驚き気味の悠ちゃんが言う。

『終わったら迎えに行くから』

電話が切れた。
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