Dear my Dr.
「…来ないかと思った」

「え?」

不安で、悲しくて、切なくて、どうしようもなかった。

「悠ちゃんが、結婚すること迷ってるんじゃないかと思って、不安で…」

今まで考えてたこと、思わず口に出てしまった。

言わないようにしてたのに。

我慢してたのに。

泣かないようにしてたのに。

「…美波?」

急に大きな腕に包まれた。

「それはこっちのセリフ」

「……え?」

「いつまでたっても“まだ書いてない”って言われたら、不安になるだろ?」

「そ、それは…」

まさか印鑑を押す練習をしてたからだなんて、口が裂けても言えないよね。

「僕はね、美波と結婚できてラッキーだと思ってるよ。茅島家の次男に生まれたことを神様に感謝したいと思う」

「そんな大げさな…」

「周りから何と言われようと、僕はただ、美波のことが好きだから結婚したいんだ」

好きだから…

聞き間違いじゃないよね?

悠ちゃんの大きな背中に腕をまわす。

「ありがとう…」

よかった。

これで、ちゃんと婚姻届を出せる。

悠ちゃんの耳元で、恥ずかしいからコッソリ言う。

“私も、好きだから”
< 26 / 120 >

この作品をシェア

pagetop