Dear my Dr.
「茅島さま」

たぶん、何度か呼ばれたんだろう。

うっかりしてて、呼ばれたことに気付かなかった私。

慣れない“茅島”の名前。

マンションのラウンジで、コンシェルジュさんに呼び止められたのだった。

「奥様宛ての宅配便をお預かりさせていただいております」

って。

奥様、だって。

なんか、くすぐったいよ。

「ありがとうございます」

小包を受け取って、家に帰る。

送り主は…お母さんだ。

箱を開けてみると、エプロンと、同じ柄の鍋つかみ。

“悠哉くんと仲良くね”

そう書かれたメモと一緒に。

なかなか子離れできないお母さんだから、1カ月は連絡禁止だよって言った。

その通りに、電話もメールも来ない。

だからきっとこれは、じっとしてられなくて送ってしまったんだろうな。

私からの電話を期待して。

……お母さん。

私も親離れできないじゃない?

今まで気づかないフリしてたけど、ホームシックかも。

ずーっと実家暮らしだったから。

大切に育ててもらってきたから。

今だけ、こっそり泣いて、あとで電話しよう。

“ありがとう”って。
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