Dear my Dr.
院長室
コツ、コツ、コツ…
足音が聞こえてきて、顔を上げた。
ここは、伊崎総合病院の院長室前。
「…まだいたのか」
ため息混じりのお父さん。
「父さんだって忙しいんだ。これから理事会がある。帰りなさい」
私の隣には、表情ひとつ変えないお兄ちゃんが、ポケットに手を突っ込んで立っている。
ほらな、って顔。
お父さんは無言で、白衣をひるがえし院長室に入って行った。
ドアが閉まった瞬間。
お兄ちゃんが言う。
「だから言っただろ?頑固オヤジは、てこでも動かないって」
「でも…」
「諦めな。悠哉くん、今日出発じゃねーの?見送り行かなくていいのか?」
お兄ちゃんのその言葉を聞いて、胸が苦しくなった。
でも……
「いいの。悠ちゃんがね、見送りはいいよ、って。私も、きっと泣いちゃうから」
「…ふっ、美波は泣き虫だもんな」
お兄ちゃんは、私の頭をガシガシと乱暴になでた。
むぅ~っ。
いつも子供扱いする。
お兄ちゃんだって、私と同じくらい子供っぽいくせに!
お父さんと似て、超頑固だし。
「お前はいいよなー…」
「なにが?」
「自由で、幸せそうで」
「お兄ちゃんこそ都会で羽伸ばして、自由じゃないの?私なんて一人暮らしも許してもらえないのに~」
「そりゃ御愁傷様だな」
悠ちゃんが行ってしまった今日からは、また実家暮らし。
つまんないな。
足音が聞こえてきて、顔を上げた。
ここは、伊崎総合病院の院長室前。
「…まだいたのか」
ため息混じりのお父さん。
「父さんだって忙しいんだ。これから理事会がある。帰りなさい」
私の隣には、表情ひとつ変えないお兄ちゃんが、ポケットに手を突っ込んで立っている。
ほらな、って顔。
お父さんは無言で、白衣をひるがえし院長室に入って行った。
ドアが閉まった瞬間。
お兄ちゃんが言う。
「だから言っただろ?頑固オヤジは、てこでも動かないって」
「でも…」
「諦めな。悠哉くん、今日出発じゃねーの?見送り行かなくていいのか?」
お兄ちゃんのその言葉を聞いて、胸が苦しくなった。
でも……
「いいの。悠ちゃんがね、見送りはいいよ、って。私も、きっと泣いちゃうから」
「…ふっ、美波は泣き虫だもんな」
お兄ちゃんは、私の頭をガシガシと乱暴になでた。
むぅ~っ。
いつも子供扱いする。
お兄ちゃんだって、私と同じくらい子供っぽいくせに!
お父さんと似て、超頑固だし。
「お前はいいよなー…」
「なにが?」
「自由で、幸せそうで」
「お兄ちゃんこそ都会で羽伸ばして、自由じゃないの?私なんて一人暮らしも許してもらえないのに~」
「そりゃ御愁傷様だな」
悠ちゃんが行ってしまった今日からは、また実家暮らし。
つまんないな。