Dear my Dr.
「それにしても…」

白衣のポケットに手を突っ込んだまま、私と向き合うお父さん。

「キミたち夫婦は、同じような格好で、同じ場所で待ってるんだな」

「…夫婦?どういうこと?」

「ん?聞いてないのか?張り込み事件のこと」

張り込み事件って…?

そんなの悠ちゃんから聞いたことない。

「浩哉くんと美波の婚約を解消してくれって、頼み込みに来たことがあった」

「ひろや…くん??」

「なんだ、それも知らないのか?」

「私って、やっぱり浩哉くんの婚約者だったの!?」

「そういうことだな」

いつも厳しい顔をしてることが多いのに、今日は和やかな表情。

思い出し笑いしてる。

私はというと、混乱中。

だって、それっていつの話!?

「ちょうど美波が高校入学したころかな。いきなり悠哉くんがやってきて“僕じゃだめですか?”って。茅島病院の次期院長じゃないからダメだって追い返したら、次の日も、その次の日も…」

「うそ…だって…その頃にそんなきっかけ、なかったよ?」

だって、その頃は悠ちゃんと会う機会なんてなかった。

年に1度、何かのパーティーで会うか、会わないか。

そんな時期に、悠ちゃんが私との結婚を考えていたなんて。

信じられない。

ホントに?

ホントだとしたら、なんてドラマチックな展開。





“浩哉くんと美波の婚約は、もうずっと前から決まっていたことだ”

“どうして僕じゃダメなんですか?”

“その理由は、悠哉くんもわかるだろう?”

“茅島病院の…次期院長じゃないからですか?”

“そういうことだ”




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