Dear my Dr.
今日は、茅島の実家に来ている。

悠ちゃんに頼まれて、こっちに残してる医学書を、むこうへ送るため。

私には理解不能だけど…

とりあえず、リストアップされた本のタイトルを探して、箱に詰めていく。

……1時間後。

詰め終わって階段を下りようとした、その時。

「美波、ちょっと待って」

声がしたかと思うと、急に手元が軽くなった。

視界に入ってきたのは…

「浩哉くん…!!」

「久しぶりだな」

あんなに重かった段ボール箱を、軽々と持って降りる浩哉くん。

あっけにとられてしまった。

「どうして?大阪にいたんじゃ…」

「悠哉が抜けた分の穴埋めをしようかと思って帰ってきたんだ」

そう言って、箱を床に下ろした。

悠ちゃんよりも少しだけ背が高い。

顔立ちは似ているけど、目元がややキリっとしてる。

「美波は置いてかれたんだな。かわいそうに」

昔と同じように、子供をあやすみたいに私をなでた。

本当なら、浩哉くんが婚約者だったんだよね…。

そう考えると、変な気分。

「…浩哉くんは、私の婚約者だって知ってたの?」

「知ってたよ。っていうか、美波は知らなかったのか!?」

「う、うん。覚えてない…」

「うそだろー?あれだけ可愛がってやったのにさぁ」

「ごめんなさい…」

ホント、失礼な話だと思う。

でも7つも歳がはなれてたら、そんな実感ないと思うし?

そんな言い訳を心の中でしてみた。

「まぁ、結果的に恋愛結婚みたいになって、良かったんじゃないの?」

そう言ってくれる浩哉くんは、大人だ。

そんな雄哉くんが、思い出したように言う。

「それにしても、どうすんだろうな?伊崎病院の院長の件は…」

「院長って?」

「秀介が継がないなら、悠哉が継ぐっていう条件。伊崎先生も、こういう状況だし考えてるんじゃないのかなー?」

「え?どういうこと?」

「…美波、聞いてないのか?」
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