Dear my Dr.
家に着いて、酔いがまわって足元をふらつかせながら、ベッドに倒れこむ。

「美波、飲みすぎだよ」

そう笑いながら、私の靴を脱がせてくれる悠ちゃん。

いつもは紳士なくせに、こういうときはタダでは置いてくれないのも悠ちゃん。

そのまま私の上に覆いかぶさる。

繊細すぎるタッチが、心も体も溶かしていってしまう。

「……っあ…、ん……やだ」

一瞬よぎった、鳴海さんの顔。

思わず抵抗した。

「……やっぱ、ダメ」

「なんで?」

なんでって…

そういう気分じゃないからだよ。

抵抗し続ける私に観念したのか、悠ちゃんの体重が私の上から消える。

すこし寂しいのが本音。

ベッドから降りて立ち上がる悠ちゃんの背中に言う。

「…“梓”さんとも、した?」

酔ってるからこそ言えたセリフ。

普段の私なら絶対に聞けないもの。

別に、悠ちゃんからの返事を期待して聞いたわけじゃないけれど。

しずかな空気が流れる。

「…なんでそんなこと聞くの?」

「だって……」

「なんか誤解してないか?」

悠ちゃんは振り返って、またベッドに戻ってきた。

誤解じゃないし。

私、見たんだもん。

「…だって、悠ちゃんと鳴海さんが一緒にいるところ見たもん」

「いつの話?」

「ちょうど婚約した、次の夏くらい」

「美波がまだ高校生のころ?」

「……うん」
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