Dear my Dr.
悠ちゃんと別れて、病院を出る。

救急外来の外に出たところで、どこかで見覚えのある後ろ姿が…

「はい、よろしくお願いしまーす」

…やっぱり。

ちょっとくたびれた白衣を着た人物。

「お兄ちゃん?」

「おー、美波!いいところに!タクシー代貸して!」

「なんでよぉ!?」

「患者さんの搬送に救急車に乗ってきたはいいけど、帰りは自力で帰んなきゃならないんだよ」

相変わらずのお兄ちゃん…

こんなのでホントに心臓外科医をできてるんだろうか…?

本気で疑う。

「ふつうはタクシーチケットをきるんじゃないの?」

「だから、全部忘れてきたんだって。小銭くらいしか持ってないんだよ」

「……電車で帰れば?」

「この格好で?ぜってーヤダ」

まぁ確かに、目立つよね。

白衣脱いでも、下は術衣だし。

つのる話もあるから、一緒に乗っていくことにした。

二人で話すのって久しぶり。

お父さんの手術騒動以来だよ。

「お兄ちゃんさぁ、病院継ぐんでしょ?だから帰ってきたんだよね?」

「そうみたいだなー」

「他人事じゃないでしょっ」

相変わらずなんだから…。
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