全て”すき…”から始まった…。
カオリは、自分で目標を決めてから、

アルバイトと、色彩の勉強と忙しい

日々を送るようになっていた。

一週間に3日のアルバイトと、一週間に2日の

色彩の学校にも通い、

空いた時間は、優美に会ったり、今まで、

父親にまかせきりだった料理を作ったり、

たまに、母親と食事をしたりで、

わざと、忙しくしている自分も、

そこには居た。

まず、色彩検定の2級が欲しかった。

そこから先は、建築の勉強の方にとりかかろうと、

思っていた。

何かに、集中し、努力するという事は、

カオリにとって、初めての経験で、

それはそれで、充実した時間だった。

そんな時、ふと、亮の夢の事を思い出した。

亮は、カオリと結婚する前は、劇団に入っていて、

舞台に立つのが、夢だった。

その頃は、その話しを聞いても、所詮、夢だし…。

そんな程度にしか、聞いてなかった。

自分が、何かを目指した事がなくて、

解らなかったのだと、今になって、

それを、諦めた亮の気持ちを、考えたりした。

カオリは、自分が、何もわかってなかったと

いう事に、今になって、気付いた。

自分を、すきになって欲しくて、

そんな事ばかり求めていた。

相手の気持ちに、無神経すぎた…。

気付いた時には、随分、時間が立ち過ぎている…。



 「カオリ、優美ちゃんが、来たよ。」


会う約束をしていた優美が、家まで、

迎えに来てくれたみたいだった。

時間だけは、どんどん流れていった…。
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