全て”すき…”から始まった…。
 「カオリ、何、考えてる?」

優美は、最近、車の免許をとったばかり

だった。

それで、出掛けたくて、うずうずしていた。


 「なにも。運転、気をつけてね。」


 「ふ~ん、何もか…。まっいいか、運転は、

 任しといて!で、どこ行く?」



 「…動物園行かない?」

カオリは、亮との思い出の動物園に

行こうと言った。

 「えっ?動物園?いいけど…。

 カオリは、進歩ないな~。」

優美は、カオリが、動物園に行こうと言った事に、

少し、驚いた。だが、わざと、茶化したりした。


 「うるさいな~。ちゃんと、前見てね!」

カオリも、心の中は、別として、明るい自分を

保っている。

その方が、自分も助かるのだ…。


久しぶりに訪れた動物園は、前と、何も変わって

いなかった。

動物と、子供達の笑い声と、

幸せな空間が、そこには、存在していた。



時間が経つごとに、誰も、亮との事を、

カオリに聞かなくなっていった…。

カオリ自身も、亮という言葉を、

発しなくなっていた。



 亮ともう、1年半、会ってなかった…。


でも、カオリは、まだ、

離婚届を、出せずにいた……。

その事を、考える事すら、カオリは、嫌だった。

どこかで、亮を、待っている自分が

いたのだ。

あの幸せだった頃みたいに……

どこかで、期待していた……。
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