全て”すき…”から始まった…。
 「ただいま。」

カオリは、父親のいる家に帰って来た。


 「おかえり、亮さん、どうだった?」

父親は、いつもと同じ優しい顔をして聞いてきた。



 「うん、多分、大丈夫。大丈夫…だと、思う。」


 カオリは、少し考えながら、そう答えた。


 「そうか、よかった。」



 「うん……パパ、私、亮と…離婚する。」



 「?…うん、そうか。カオリがそう思うのなら…

 いいと思うよ。カオリは、まだ若い、自分の思ったように、

 自由に、生きなさい。」


 「うん、パパ…ありがとう。」


 次の日、カオリは、離婚届を、

出しに行った。

その日は、すごくいい天気で、

外で、日向ぼっこをしている野良猫達も、

カオリの目には、幸せそうに、見えた。

何もかもが、新しく始まるのだった。

悲しくないわけは、ない。

急にテンションが、下がって、

落ち込んで、涙が、止まらなくなる事もある。

でも、希望も、少しは、育ってきている。

カオリは、自分の足で、歩いていくと、

決めたのだ。

悲しみの裏側で、自分の決断が、ほんの少し、

誇らしくもあった。

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