全て”すき…”から始まった…。
 1時間ほど、カオリは、外を歩いてから、

家に帰った。

行く場所なんて、カオリには、思いつかなかった…。

この家が、自分の居場所なのだ。


 「ただいま……。」

部屋は、明かりのついたまま、シーンと

していた。

亮は、居なくなっていた…。

カオリは、急に不安になった。

”このまま、帰って来なかったら……。”

とか、そんな不安が、頭に浮かんだ…。


 あまりのショックで、飛び出してしまったが、

それは…亮をすきだから…のショックで、

亮を失うなんて、考えた事もなかった。

カオリは、今までの亮との生活を、いろいろ

考えた。

時々見せる、亮の深刻な表情は、お金の事だったのかも

しれない…と、こんな事があって、初めて、

思ったのだった。

亮が、深刻な顔の時に、どうして、自分は、

”どうしたの?”とか、聞かなかったのか、

カオリは、後悔していた。

なにかあると思いながら、見過ごしてきた。

”いろいろな事と、向き合う勇気が、足りない…”

と、思ったりした。


カオリは、部屋の中で、自分の事を、

責め続けた。

テーブルの上の豪華な料理が、

誰に手をつけられる事もなく、そのままの

状態だった……。
< 88 / 118 >

この作品をシェア

pagetop